新年を迎えるにあたり
本堂の脇机の仏器
本堂大壇の仏器
燈明の光と仏器 延壽院ではお正月を迎えるにあたり、本堂、摩利支天堂、大師堂、庫裏、境内、地蔵堂、位牌堂、納骨堂
などの大掃除を行います。
各御堂の掃除を終えるまで約1か月程かかります。
まず、最初に仏器を磨きます。仏器とは仏様を勧請し供養や祈願をする為の道具です。
この仏器は真鍮でできていますので、磨いてから約2か月程度で金色から錆びた色に変色します。
変色する度にピカールという洗浄剤を使い雑巾で磨きます。磨いた仏器をさらに新しい雑巾で2度磨きます。
大切な法具になりますので、汚い雑巾は使えません。
磨きあがった仏器をお供えする時は私自身も清浄になった様に感じます。
みなさんが自分の部屋を綺麗に掃除をすると気分が良くなったり気持ちが晴れ晴れしませんか?そんな気持ちです。
全部の仏器を磨くのにだいたい朝から晩まで2日程度かかります。
昔、「師匠に荘厳は信心を表す」からお寺は常に綺麗にしろ!!と怒られました。
1つの仏器を磨くのに真鍮が自分の顔が映り、光るまで磨き続けろと言われました。
仏器は汚くなれば、なかなか綺麗になりません。何百年も使用し、金色に保つには定期的に磨きをかけます。
私は師匠の寺で仏器を磨いていたら、それは下用雑巾だと怒られました。
下用雑巾? どういう事だ?
下用とは自分が歩く場所や仏さまをお祀りするお堂以外の場所で使う雑巾の事です。
最初は私も知らず下用雑巾を使用し、教えていただきました。
上用雑巾で仏器を磨きなさいという教えでした。 上用とは仏様のお祀りしているお堂の中でも綺麗な場所
を拭く雑巾の事です。 そんな雑巾があるとは…… みなさんの家では仏壇専用の雑巾ということです。
お寺の御堂や境内をきれいにすることは住職の信心が問われます。
お寺が汚いと住職の信心が無い事を意味します。 ですから掃除から荘厳まで綺麗にします。
綺麗に保つとは一つの供養であり、自分自身の御身を心をきれいに磨くことであります。
師匠はいくら僧侶といったって人だから清浄な心も悪しき心も持つものだ。
だから僧侶は下座や掃除を心がけ、自分の心をいつまでも磨き続けろと教えられました。
掃除する心や手を合わす心を毎日していると自然と悪しき心、悪いことも考えなくなるからと教わりました
師匠は私に悪しき心や悪知恵をすぐに辞めることはできるか?と問いました。
無理です。と私は答えます。
人は欲もあり、悪い智慧を考えることができる分すぐにはなかなか捨てられない。
悪いことだと分かっていても考え、行動や言動にでる。
だけら掃除や手を合わせる事により仏様と向き合うことにより、自分の心を磨き、段々自分の中で善悪を判断
できる様になると教えてくれました。
そして、お正月はお参りの方が多く手を合わせにこられる。
手を合わせ、みんなが去年の1年の感謝と今年の1年の抱負や祈念、所願成就を願う。
だから仏様のご利益が一人でも多くの方へ渡るように日々精進しながら仏器を磨いています。
摩利支天堂の荘厳本年もまた皆様にとって良い年でありますように。